LWA / Life With Art(ルワー)
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アニッシュ・カプーアから蔡國強まで。新潟市の「朱鷺メッセ」で出会える現代アート作品たち

ぷらいまり。

2022.09.12

越後妻有での「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や、佐渡島での「さどの島銀河芸術祭2022」など、新潟県でさまざまな現代アートのイベントが開催されています。

こうしたイベントとあわせて新潟市を訪れたら、新潟市内でも、現代アート作品を鑑賞してみませんか?

この記事では、新潟県新潟市にある「朱鷺メッセ」で無料で楽しめる現代アート作品を5つご紹介します。

信濃川から朱鷺メッセを臨む
信濃川から朱鷺メッセを臨む

朱鷺メッセとは?

新潟駅からバスで10分程度の場所にある、コンベンションセンター、ホテル、美術館、展望施設、業務施設などの機能が集まった複合施設で、2003年にグランドオープンしました。

船をイメージして設計されたという建物の設計を手がけたのは、「スパイラル」や「幕張メッセ」を手がけた槇文彦氏の率いる槇総合計画事務所。ガラスと金属で構成された外観は透明感があります。また、地上31階建てで垂直に伸びる「万代島ビル」と、すっと水平に広がる「新潟コンベンションセンター」の組み合わせも美しい建物です。

大きなガラスの壁面と 格子状の金属が美しい朱鷺メッセの建物
大きなガラスの壁面と 格子状の金属が美しい朱鷺メッセの建物

朱鷺メッセで楽しめる現代アート作品 5つ

この「朱鷺メッセ」には、オープンした2003年より、5つの現代アート作品が設置されています。これら5つの作品を見てみましょう。

「灯台」 /  蔡國強

「灯台」 /蔡國強
「灯台」 /蔡國強

まずは屋外から。信濃川に面した「リバーフロントパーク」に設置されているのは、中華人民共和国出身で、ニューヨーク在住の現代美術家 蔡國強の「灯台」。

蔡國強は、火薬を用いた作品や、中国の伝統文化を現代に結びつけるような作品が特徴的なアーティスト。2008年の北京オリンピックでは、開会式・閉会式の花火を手がけたことで話題にもなりました。

こちらの作品「灯台」は、一見、荒々しい自然のままの巨大な岩が置かれているようですが、よく見ると、パッチワークのような割れ目が見えます。岩の内部はくりぬかれて、割れ目の内側からは日中は霧が噴出し、夜には光の束が放たれるそうです。

巨大な岩から剥がれ落ちたような岩のかけらには、作者のサインとタイトルを見ることもできます。

「灯台」 /蔡國強
「灯台」 /蔡國強

「天秘」 / 安田侃

「天秘」 / 安田侃
「天秘」 / 安田侃

蔡國強の無骨な巨岩の作品と対をなすように、真っ白く滑らかで、凜と川辺に立つ作品は、北海道に生まれ、イタリアで大理石やブロンズ彫刻の制作を行うアーティスト 安田侃 (やすだ かん) の「天秘」 。

安田侃氏は、東京ミッドタウンや東京国際フォーラムなどのパブリックアートも手がけているので、作品を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

「天秘」 / 安田侃
「天秘」 / 安田侃

作品「天秘」は、巨大な石でありながらも、縦にすっと細長く立ち、軽やかな印象を与えます。屋外で刻々と変わる日の光と影によってその見え方が変化し、夕方には夕日で朱鷺色に染まって見えるのだとか。

真っ白い大理石が、芝生の緑の中にも、青空と海の青色に映える作品です。

「道に沿ってどこかに,幾つかの色」 / ダニエル・ビュレン

「道に沿ってどこかに,幾つかの色」 / ダニエル・ビュレン
「道に沿ってどこかに,幾つかの色」 / ダニエル・ビュレン

川辺から万代島ビル前の広場に歩いて行くと、カラフルな角柱が並びます。

フランス生まれのアーティスト ダニエル・ビュレンによる「道に沿ってどこかに,幾つかの色」。ダニエル・ビュレンは自身の論理に基づいた、8.7センチ幅のストライプ模様の作品を数多く制作しているアーティストです。

このストライプを、絵画や彫刻から、壁面、建物にも展開し、都市風景や自然の風景を変容させています。お台場にもストライプをモチーフにしたパブリックアートが設置されており、こちらをご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。

「道に沿ってどこかに,幾つかの色」 / ダニエル・ビュレン
「道に沿ってどこかに,幾つかの色」 / ダニエル・ビュレン

こちらの作品「道に沿ってどこかに,幾つかの色」では、角柱の4面にそれぞれ異なる色・柄が描かれていますが、複数の角柱の同じ面に描かれているのは同じ図柄。作品の前を通りすぎたり、作品の中を歩き回ると、風景が変化して見えます。

明るい色合いで、見ているだけでも楽しく感じられる作品です。

「オーシャンライト・ツリー2003」 / レベッカ・ホルン

「オーシャンライト・ツリー2003」 / レベッカ・ホルン
「オーシャンライト・ツリー2003」 / レベッカ・ホルン

それでは続いて、コンベンションセンターの屋内に入ってみましょう。アトリウムの2Fにあるのは、ドイツの現代美術家 レベッカ・ホルンによる「オーシャンライト・ツリー2003」。

レベッカ・ホルンは、彫刻の材料で肺を冒されて療養生活を強いられ、以降、その体験から人間の身体と自然のエネルギーの交感をテーマにした作品の制作を行ってきました。

「オーシャンライト・ツリー2003」 / レベッカ・ホルン
「オーシャンライト・ツリー2003」 / レベッカ・ホルン

床には新潟産の3つの石が置かれ、その中には、海のエネルギーを暗示する海水が満たされています。そして、2フロア分の吹き抜けとなった高い天井まで伸びる、光の矢のような金の振り子の突端部の三角錐からは青い水の波紋が天井に投影されます。新潟を潤し、信濃川を下ってきた万物の源である「水」のエネルギーが、天井まで引き上げられていく様子が表現されているようです。

開けた空間で、すっと天井まで伸びた金色のオブジェが印象的な作品です。

「世界を反転させる 2003」 / アニッシュ・カプーア

「世界を反転させる 2003」 / アニッシュ・カプーア
「世界を反転させる 2003」 / アニッシュ・カプーア

最後に、コンベンションセンターのメインホールロビーに設置されているのは、インド ボンベイ出身で、ロンドン在住の現代彫刻家 アニッシュ・カプーアの「世界を反転させる 2003」。

アニッシュ・カプーアは、シンプルな形状と、鏡や特殊な塗料などの素材を組み合わせ、現実の世界の見え方とは異なる、見る人の視覚に強い影響を与える作品を制作しています。世界一黒い塗料「ベンタブラック」をアートでの独占使用権を獲得したことでも話題になりました。

「世界を反転させる 2003」は、直径3.5Mにもなる巨大な凹面鏡のような作品。表面が鏡面に磨かれた作品はオブジェとしても印象的ですが、離れた位置から作品に近づいていくと、鏡面に映る像が逆転しているところから、近づいて行くに従って像はもう一度反転します。

近づいたり遠ざかったり、また、作品の前を横切ってみたりと動き回って見ることで、日常とは違った世界の見え方が体験できる作品です。

無料の展望台からの眺めも満喫

世界的なアーティストたちの作品が展示された「朱鷺メッセ」ですが、このなかの「万代島ビル」の31階は「Befcoばかうけ展望室」となっており、なんと無料で展望台を楽しむことができるんです。

新潟市内を一望でき、「萬代橋」をはじめとする信濃川にかかる橋の連なりや、雄大な五頭連峰、天気の良い日には日本海、佐渡島までも見渡せます。

「Befcoばかうけ展望室」から信濃川の眺め
「Befcoばかうけ展望室」から信濃川の眺め

また、同じ建物の中には、現代美術のコレクションにも力を入れている「新潟県立万代島美術館」も。新潟市内の観光でも、現代アート作品をあわせて楽しんでみるのはいかがでしょうか。

文・写真:ぷらいまり。

ぷらいまり。 ライター / ぷらいまり。

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