知っていると作品を見るのがもっと楽しくなる アートの材質・技法【写真編】

船や飛行機で「島」へ旅行に行くのって、ちょっとした非日常感があってわくわくしますよね。そんな非日常の中でアート作品に触れる時間は、さらに特別な時間。
「アートの島」といえば香川県の「直島」が有名ですが、直島以外にもアートを楽しめる島って、実はほかにもあるんです。
この記事では、直島をはじめ、芸術祭期間中だけでなく、いつでも現代アートを楽しめる島6つと、独自の芸術祭を開催している島3つをご紹介します。
まずは「アートの島」といえばおなじみの「直島」!香川県の宇野港か、香川県の高松港から、高速船かフェリーでアクセスできます。
草間彌生氏の「南瓜」が有名で、フェリーもバスも同じ水玉のモチーフでいっぱい。移動まで楽しくなりますね。
「瀬戸内国際芸術祭」の舞台のひとつにもなる島ですが、常設の美術館のほか、草間彌生さんの「赤かぼちゃ」や、藤本壮介さんの「直島パヴィリオン」など、常設で見られる屋外アートが島中いたるところに設置されており、芸術祭期間中以外でもたくさんのアートを楽しめます。
1992年に直島の中に初めて作られたアート施設で、美術館とホテルが一体となった「ベネッセハウスミュージアム」や、全ての作品が専用の部屋に設置され、特に自然光で見るモネの「睡蓮」が美しい「地中美術館」などの美術館は見応え抜群。
また、「家プロジェクト」では、杉本博司さんや内藤礼さん、ジェームズ・タレルさんといった著名なアーティストたちが空き家などを改修して空間そのものを作品化。どれも、ここでしか体験できない特別なアート作品ですね。
芸術祭期間中以外でも見所がたくさんあるので、島内での宿泊もオススメ。「ベネッセハウスミュージアム」で宿泊者限定の作品を心ゆくまで楽しむのもよし、民宿に宿泊して、大竹伸朗さんの手がけた入浴できるアート施設「直島銭湯「I♥︎湯」」に浸かるのもよし。アート好きならぜひ一度訪れたい場所です。
https://goo.gl/maps/Z5QYwGM2hpSHniYK9
続いて、愛知の三河湾の中にある「佐久島」。実は、直島の「家プロジェクト」がはじまるよりも前の1996年から、現代アートで街おこしプロジェクトを行っている島なんです。
愛知県の一色港から高速船でアクセスします。(カーフェリーは無いのでご注意ください。)
三河湾の有人島の中では最大となる佐久島の広さは、ディズニーランド約3個分。この島の自然の中に、20を超える、「この場所のために作られた作品」が常設展示され、「アートピクニック」として、スタンプを集めながら作品を巡れます。歩いて回るのは時間がかかるので、自転車での散策がオススメです。
フォトジェニックな「おひるねハウス」や「イーストハウス」(ともに、作者は南川祐輝さん)など、海辺にも風景に溶け込んだアート作品が多数。これらの作品には登ることもできますが、目の前が海でいっぱいになり、素敵な風景を楽しめます。
また、大浦海水浴場にある「カモメの駐車場」(木村崇人さん)など、風景と一体化したユニークな作品も。作品そのものも、写真を撮るのも、風景を見るのも楽しいアートなピクニックです。
ちなみに、佐久島は海鮮も美味しいです。名物の「大アサリ」などもぜひ楽しんでくださいね。
https://goo.gl/maps/hj8NM9gmbs5pQdaV6
瀬戸内海のなかでも、瀬戸内国際芸術祭の会場とは異なるエリアにも、アートを楽しめる島があるんです。
広島県にある百島(ももしま)は、尾道港または常石港から高速船かフェリーでアクセス。
百島は周囲約12km、 人口500名ほどの島。この島のアート活動の中心となるのは、閉校になった尾道市百島の旧中学校舎を再活用した「アートベース百島」。アーティスト・柳幸典さんと協働する方々による創作活動を通じ、離島の創造的な再生を試みるアートセンターです。このなかに、柳 幸典さん、原口 典之さん、岩崎 貴宏さん、吉田 夏奈さんという4名のアーティストの大規模な作品が常設されています。
また、島内には数カ所のアートスペースが点在。例えば、「乙1731-GOEMON HOUSE-」は、百島で47年間空き家となっていた昭和32年建造の民家をアートで再生する長期プロジェクト。2022年には、アート作品の展示空間を兼ねた「安らげない宿」をテーマにした宿泊施設となりました。
また、閉鎖されて老朽化も著しかった昭和36年に建造された旧映画館を、当時の雰囲気を活かしながらアートで再生する長期プロジェクト「日章館」では、柳幸典さんの「ヒノマル・イルミネーション」を常設展示しています。
百島に展示された作品たちは、決して”心地よい”作品ばかりではないかもしれません。そうした作品たちと、静かに、じっくりと作品と向き合って考えるのも良い時間ではないでしょうか。
https://goo.gl/maps/Nj4zhBh1SLYoB3Zn8
瀬戸内国際芸術祭の会場となる島々のうち、芸術祭の期間以外にもアートを楽しめる場所を見てみましょう。まずは、豊島(てしま)。
香川県の高松港、岡山県の宇野港からフェリーか旅客船でアクセスできます。島内の移動は、面積が直島よりも広く、アップダウンも激しいので、レンタカーか電動アシスト自転車をレンタルするのがオススメです。
豊島でまず見たいのは、瀬戸内海を望む小高い丘に建設された「豊島美術館」。アーティスト・内藤礼さんと建築家・西沢立衛さんによる建築とアート作品が一体化した美術館です。美術館の大きな開口部から差し込む光や風、空間内の地面から「泉」が湧き出す空間で、日常では気に留めない季節や時間の流れが感じられます。
また、2021年に亡くなったクリスチャン・ボルタンスキーさんの作品で、人々が生きた証として心臓音を収集する「心臓音のアーカイブ」と、森の中に無数の風鈴が音を奏で、個人の名前をプレートに刻む「ささやきの森」という2つの壮大な作品も見逃せません。
また、豊島からは、「犬島精錬所美術館」や「犬島「家プロジェクト」」を実施している犬島にもアクセスできるので、こちらをあわせて巡るのもオススメです。
https://goo.gl/maps/dP5jWK2cJ6ndF7Gu5
こちらも、瀬戸内国際芸術祭の舞台となる島のひとつ、小豆島です。
香川の高松港や高松東港、岡山の新岡山港や宇野港から、フェリーや高速船でアクセスが可能。多くの島がある香川の中でも最大の島で、一周するルートは約82.4kmにもなるそう。広大なので、島内の移動はレンタカーがオススメです。
島の入り口となる土庄港では、チェ・ジョンファ(崔正化)さんの「太陽の贈り物」の金色に光り輝くオリーブの王冠が迎えてくれます。また、「アンガー・フロム・ザ・ボトム 美井戸神社」は、 島にある古井戸の神様が怒り、巨大な地霊的化け物として出現し、人々を脅かすという寓話的な作品を、ビートたけしさんの構想をもとに、ヤノベケンジさんが実現した作品。高さ8メートルで水を吐く彫刻は大迫力!
また、デザイナー 清水久和さんによる「オリーブのリーゼント」は、撮影スポットとしても有名ですね。 この作品はオリーブ畑に設置されていますが、小豆島は、オリーブ、醤油、そうめんと名物もたくさん。さらに、寒霞渓など、観光の名所も多数あり、アートと食と観光、どれをとっても楽しめる場所です。
https://goo.gl/maps/F365VrVEWz7hip446
ふたたび広島県の島、生口島(いくちじま)をご紹介します。
こちらは、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約60kmの自動車専用道路「瀬戸内しまなみ海道」を使って車で行ける島。また、尾道から船でのアクセスも可能です。
こちらの島は「島ごと美術館」として、全部で17作品が屋外に展示されています。これらは、なんと1989年から開催された世界一小さなアートプロジェクト「瀬戸田ビエンナーレ」によって設置されたもの。作家自らが設置場所を選び、その場所に合ったイメージを現代アートで表現しているそうです。
また、「耕三寺」というお寺の中にある、真っ白な大理石で作られた広大な庭園「未来心の丘」も魅力的。広島県出身の彫刻家・杭谷一東さんの作品で、庭園をかたちづくる石はすべてイタリアから運んできたもの。どこを見渡しても真っ白い空間が美しく、庭園すべてが彫刻作品のような場所です。
https://goo.gl/maps/ceNdKBzrZM2MWnGz9
常設で作品を展示していないものの、島独自のアートイベントを展開している島を3つご紹介します。
都心からでも気軽に行ける猿島は、東京湾に浮かぶ唯一の自然島であり、湾内最大の無人島です。
神奈川県の横須賀にある三笠ターミナルから船で約10分。
かつては東京湾を守る要として、砲台と弾薬庫のある“要塞の島”だった猿島。兵舎、砲台、長いトンネルや、日本で数カ所にしか存在しない〝フランス積み〟のレンガの建造物など、史跡も見所満点です。
猿島では2019年から、スマホ禁止で、夜の静寂と暗闇を感じながら島内に点在するアートを体感し、アートを通して自然を体感する芸術祭「Sense Island」が開催されています。2022年は11月12日(土)から12月25日(日)に開催されますよ。
https://goo.gl/maps/craATk4ot2S6zmPg8
宇宙センターで有名な種子島ですが、実は、アートイベントも開催されているんです。
鹿児島港からフェリー、もしくは、鹿児島空港から飛行機でアクセスできます。なかなか搭乗の機会の無い小型のプロペラ機での移動は、乗るだけでもくわくわくしますよね。
種子島では、「種子島宇宙芸術祭」という芸術祭が開催されています。その中でも恒例のイベントとなり、2022年で8回目となるのが、「星の洞窟」。海岸に面した「千座の岩屋」という洞窟にプラネタリウム装置のMEGASTAR-Ⅱを設置。夜、暗くなってから洞窟の壁面に無数の星を投影し、幻想的な空間を再現します。
このほか、本物のロケットの一部を使った作品や、「世界の優れた9人のライトアーティスト(ARTDEX)」に選出され、世界で注目されるアーティスト千田泰広の光のアート作品展示など、”宇宙への玄関口”となる島らしいアート作品を見ることができます。
2022年は、11月24日(木)~26日(土)に開催されるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
https://goo.gl/maps/72A5ffgXCUBmymEfA
最後に、2022年に「佐渡島の金山」をユネスコ世界遺産への推薦が決定したことでも盛り上がっている佐渡島をご紹介します。
新潟県にある新潟港、直江津港という2つの港から、フェリーかジェットフォイルでアクセスできます。なんと、離島の中で日本一の広さを誇り、東京都23区627.57㎢+奥多摩町225.5㎢ を合わせたくらいの大きさになるのだとか。
佐渡島では、2018年から毎年「さどの島銀河芸術祭」という芸術祭が開催されています。金山やトキの森公園などの観光名所の多い佐渡島ですが、芸術祭では両津港周辺の商店街空き店舗や、寺社や漁港、廃校、元舟小屋、棚田といった、既知の観光地とは異なるスポットに作品を展示。佐渡島の新しい魅力に出会えるかも知れません。
2022年は2022年8月7日(日) ~ 10月9日(日)に開催されます。
https://goo.gl/maps/Q9wmaWGiwcucmCek8
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離島という非日常の空間で楽しむアート作品や、その場でしか見ることが出来ないアート作品たちは、美術館で見る作品とは違った気づきを与えてくれるかもしれません。
次の連休には、島旅と一緒に現代アートを楽しんでみませんか?
文・写真:ぷらいまり。