知っていると作品を見るのがもっと楽しくなる アートの材質・技法【写真編】

この記事では、立川駅から徒歩圏内で楽しめるアート作品と施設をご紹介します。
まずは、立川駅から歩行者デッキで直結の「ファーレ立川」。1994年にオープンした、ホテル、デパート、映画館、図書館、オフィスビルなど、11棟の建物からなる複合施設です。
約6ヘクタールの敷地内に、世界36か国92人の作家による109点のパブリックアートが無料で公開されています。
この街のアートをプロデュースしたのは、越後妻有トリエンナーレ 大地の芸術祭や、瀬戸内国際芸術祭などを手がけている北川フラム氏。これらのアート作品は、車止めやベンチ、街灯、換気口といった、街の機能も併せ持っているのがユニークですね。
109点の作品の中には、越後妻有や瀬戸内の芸術祭に参加しているアーティストの作品や、世界的に有名なアーティストの作品も。その一部をご紹介します。
▍≪自転車もどき VI≫ / ロバート・ラウシェンバーグ
アメリカの美術家で、ネオ・ダダの代表的な作家であり、ポップアートの先駆者としても知られるロバート・ラウシェンバーグ。こちらの作品では、本物の自転車にネオンが取り付けられています。夜にはネオンサインが光り、実際の駐輪場のサインとしても機能する作品です。
▍(タイトル不明) / ドナルド・ジャッド
アメリカの美術家で、「ミニマル・アート」を代表するアーティストのひとり、ドナルド・ジャッド。物質のもつ本質を極限までつきつめようとした作家です。こちらの作品では、外観は鉄の褐色、内側はカラフルに彩色された箱が整然と並んでいます。94年に死去し、こちらの作品がが遺作となりました。
▍≪リップスティック≫ / クレス・オルデンバーグ
ポップ・アートの重要な作家のひとりであるクレス・オルデンバーグ。ありふれた日用品を超巨大にしたり、柔らかい素材で制作することで、全く異なったものに見せる作品を多く手がけています。東京ビッグサイト前の巨大なのこぎりの作品でも有名ですね。こちらの作品では、鮮やかな赤いリップクリームを、巨大な金属板で表現しています。
▍≪山≫ / アニッシュ・カプーア
インド出身、イギリス在住のアーティスト、アニッシュ・カプーア。鏡のような光を反射する金属や、光を吸収する染料などを用い、観る人に錯覚を与えるような作品を制作するアーティストです。こちらの作品では、人工のビルの合間に、鉄製の人工の山脈をつくりだしています。時間を経て出てきた錆がよい風合いを醸し出しています。
▍≪会話≫ / ニキ・ド・サンファル
フランスの画家・彫刻家のニキ・ド・サンファル。色彩豊かな女性像などで知られるアーティストです。原色をつかったカラフルなこちらの作品は、蛇や女性、花、唇が表現された彫刻作品であるのとともに、2人が背中合わせに座れるベンチにもなっており、面白い姿勢で、タイトルのとおり「会話」が楽しめる作品にもなっています。
ほかにも、河口龍夫、宮島達男、篠原有司男、大岩オスカール幸男、岡崎乾二郎、マリーナ・アブラモヴィッチ、レベッカ・ホーン… と、数歩歩くごとに、国内外の著名なアーティストの作品たちと出会える楽しい場所です。
たくさん作品があるのは嬉しいけれど、多すぎてどこから見ていいのか分からない… なんて悩みも出てきてしまいますが、そんな時にオススメなのが、スマホアプリの「ファーレ立川アートナビ」。
109点の作品の地図のほか、それぞれのアーティスト解説&作品解説を見ることができます。読み上げ機能もあるので、音声ガイドのように使うこともできますね。
わたしも実際に使ってみましたが、便利だったのが「ツアー」機能。「全作品鑑賞ルート」のほか、「おすすめアート40作品」や「テーマ別アート 五感で楽しもう!体験しよう! 16作品」など、作品をピックアップしてルートを表示してくれます。
作品マップに自身の位置情報も表示され、作品に近づくと自動で解説を表示してくれるので、地図を読むのが苦手な方にも安心です。
続いては、JR立川駅より徒歩8分、多摩モノレールの立川北駅からはすぐの場所に、2020年にオープンした 「GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)」 。大型ホールやホテル、商業施設、オフィス等で構成された複合施設です。
ビオトープや噴水もある、公園のように心地の良いこの空間にも、たくさんのアート作品が展示されています。
全部で9つあるアート作品から、3つをご紹介します。
▍≪mirai≫ / エマニュエル・ムホー
フランス出身で日本在住の建築家・アーティストのエマニュエル・ムホーさん。東京の“色”と街並が成す複雑な“レイヤー”と、日本特有の空間構成“仕切り”から着想を得た色切(しきり)という、色で三次元空間をつくる独特のデザインで知られています。
カラフルなインスタレーション作品でも知られますが、こちらの作品は、エマニュエル・ムホーさん初となるパブリックアート作品。2020年から2119年までの「未来」の100年を視覚化した彫刻作品です。100年分の西暦が積み重ねられ、異なる色で塗装されています。
▍≪上昇輝竜≫ / 中村 哲也
多摩モノレール 立川北駅側からエスカレーターを登ってGREEN SPRINGSに入ってすぐに出迎えてくれるこちらの作品。現代社会を象徴する「スピード」と「改造」をテーマに、ジェット機やレーシングカーを模した流線型の彫刻作品「レプリカシリーズ」を展開する中村 哲也さんの作品です。
鳥のような自然界の持つカーブと飛行機のような工業製品の持つ格好良さが同時に盛り込まれています。
▍≪TELEPHONE AFTER ALL≫ / Urban Knit
今ではあまり見かけない「公衆電話」をモチーフにしたこちらの作品は、デザイナー 兼平翔太さんを中心に、このパブリックアートのアワードのために結成されたクリエイティブユニット「Urban Knit」の作品。
2機あるこちらの電話で会話ができるのと同時に、読み終わった本や、シェアしたい本を持ち寄り、自由に読むことができる「図書館」としても機能します。
アート作品の並ぶGREEN SPRINGSですが、入居するショップも楽しいです。例えば、「SUPER PAPER MARKET」は、印刷から紙の加工までを手がける「福永紙工」の手がける紙のセレクトショップ。さまざまなアーティストやデザイナーの手がけたオリジナル紙製品のほか、国内外の紙にまつわる作品やプロダクトが販売されています。
また、国内外のローカルな食品を独自の基準でセレクトして販売する「AMEKAZE」や、ライフスタイルショップの「PLUS YU」など、個性の光るお店が並びます。
GREEN SPRINGSのなかには、パブリックアートだけでなく、2つの新しい美術館もあります。
多摩信用金庫本店・本部棟の新築・移転にともない、2020年に新本店・本部棟内に開館した「たましん美術館」。
多摩信用金庫の所蔵する「たましんコレクション」と、他館からの借用作品を織り交ぜた、魅力的な企画展を開催しています。
美術館のエントランスからGREEN SPRINGSの中央広場までは吹抜でつながり、その空間には、地場の建材である多摩産杉をふんだんに使用。こちらのエントランスの無料ゾーンにも、中に入って体験できる作品が展示されていますよ。
もうひとつは、こちらも2020年にオープンした、「絵とことば」をテーマにした美術館「PLAY! MUSEUM」。
絵本「はらぺこあおむし」で有名な絵本作家 エリック・カールさんの個展や、「がまくんとかえるくん」、「ぐりとぐら」などの絵本をテーマにした展覧会、「コジコジ」などのマンガをテーマにした展覧会を開催。参加型の作品や、五感を使って楽しめる展示も多く、大人も子どもも気軽に楽しむことができる美術館です。
駅からすぐの場所で、お買い物もお散歩も、そして、アートも楽しめる立川。次の週末は、立川で心地の良い1日を過ごしてみませんか?
(文・写真:ぷらいまり)