LWA / Life With Art(ルワー)
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“観光地”だけじゃもったいない。「KAMU KANAZAWA」で、金沢の街歩きとアートを一緒に楽しもう

ぷらいまり。

2022.06.27

「金沢21世紀美術館」のほか、2020年には「国立工芸館」が移転オープンするなど、”アートの街”としても有名な石川県金沢市。そんな金沢に、2020年に新たな現代アートスポットが誕生しました。

この記事では、金沢に行ったら是非楽しみたいアートスポット「KAMU KANAZAWA」について、巡り方から作品までをご紹介します。

KAMU KANAZAWAとは?

「KAMU kanazawa」は、アートコレクター・林田堅太郎氏が6月に石川・金沢市に開館させた美術館。インスタレーション、テクノロジーを中心としたアートコレクションがベースとなっています。

「KAMU Center」外観
「KAMU Center」外観

⾦沢21世紀美術館から徒歩3分の「KAMU Center」をはじめ、金沢市街地の7箇所 (20226月現在) で現代アート作品を楽しむことができます。

現代アートによる⽇本の⽂化資源の向上のための作品収集、同時代的に⽣まれるアートの発信、さらに拠点となる⾦沢市の現代アートの街としての発展に貢献することを⽬的に活動しているそうです。

どうやって行くの?

金沢の市街地に複数の展示拠点をもつ「KAMU KANAZAWA」ですが、まずは金沢駅からバスで15分程度、金沢21世紀美術館の近くにある「KAMU Center」に向かいましょう。

百万石通りに面した「KAMU Center」入り口
百万石通りに面した「KAMU Center」入り口

最初にこちらで料金を支払い、チケットと地図を受け取ります。各施設ではこのチケットを提示するので、なくさないように気をつけてくださいね。

各展示施設間の移動は徒歩で3分から15分程度。十分に徒歩ですべて回れる距離です。ただし、1作品ごとの鑑賞時間にもよりますが、すべてまわるのには1時間半から2時間程度見ておいたほうが良いでしょう。

実際の作品をご紹介

では、会場ごとに実際の作品を見てみましょう。

KAMU Center

こちらには3つのフロアに1アーティストずつの作品が展示されています。

1Fは、金沢21世紀美術館の≪スイミングプール≫でも有名なアルゼンチン出身の現代アーティスト レアンドロ・エルリッヒによる≪INFINITE STAIRCASE≫。わたしたちの「当たり前」を揺さぶる、だまし絵のような不思議な作品ですね。

≪INFINITE STAIRCASE≫ / レアンドロ・エルリッヒ
≪INFINITE STAIRCASE≫ / レアンドロ・エルリッヒ

階段を上ると、英国・マン島出身のステファニー・クエールによるたくさんの等身大の動物彫刻たちが。何枚ものスケッチを描いた後に粘土で制作されるという動物たちは、作家の手の跡が残って見えるような勢いのある造形、シンプルな色遣いながらも、体温を感じられるようなリアルさが感じられる作品です。

ステファニー・クエール 展示風景
ステファニー・クエール 展示風景
さりげなく隠れている作品も複数箇所にあるので、探してみてくださいね
さりげなく隠れている作品も複数箇所にあるので、探してみてくださいね

3Fには、日本のアーティスト 桑田卓郎による色鮮やかな陶芸作品群。伝統的な日本の陶芸技法に基づきながら、独特の色彩と造形でつくられた作品群は、「陶芸」のイメージを鮮やかに刷新してくれます。

桑田卓郎 展示風景
桑田卓郎 展示風景

KAMU k≐k

中心街にある商業施設「Prego(プレーゴ)」の一角にあるのが「KAMU k≐k」。外観は、まるで高級なレストランのようです。

「KAMU k≐k」入り口
「KAMU k≐k」入り口

こちらで展開されているのは、フードアートの分野で活躍する諏訪綾子によるインスタレーション作品≪TALISMAN in the woods(タリスマンインザウッズ)≫。

≪TALISMAN in the woods≫ / 諏訪綾子
≪TALISMAN in the woods≫ / 諏訪綾子

自然、都市、水の循環をテーマとした作品。自然の「鼓動」を思わせる音の響く会場には石川県の広域に水を供給する水源地“白山”で採取された杉の枝葉が照らし出されています。森で採取されたという良い香りに満ちた会場で「循環のあじわい」を感じることができる作品です。

≪TALISMAN in the woods≫ / 諏訪綾子
≪TALISMAN in the woods≫ / 諏訪綾子

KAMU L

中心街から少し外れた場所、「とおりゃんせ KANAZAWA FOODLABO」という屋台村の中にあるのが「KAMU L」。スナップショットの名手として知られ、”アレ・ブレ・ボケ”の作風で知られる写真家 森山大道のインスタレーション≪Lip Bar≫が展開されています。

「KAMU L」のある「とおりゃんせ KANAZAWA FOODLABO」外観
「KAMU L」のある「とおりゃんせ KANAZAWA FOODLABO」外観

一面、真っ赤な唇で満たされた空間は、社会の猥雑さや欲望を体感でき、また、少しノスタルジックにも感じられる空間です。

≪Lip Bar≫ / 森山大道
≪Lip Bar≫ / 森山大道

なお、こちらは、月曜から土曜の20:00〜24:00はバーとして運営され、お酒を楽しむこともできるそう。

KAMU Black Black

タテマチ商店街の中にある、細長い建物。幅3m、高さ7m、奥行き20mという独特な展示空間のなかでは、オーディオビジュアルアーティストの黒川良一による音と光のインスタレーション作品 ≪Líthi(レーテー)≫ が展開されています。

「KAMU Black Black」入り口
「KAMU Black Black」入り口

この会場に来るまでに歩いてきた、のどかな商店街の雰囲気の商店街から一転。重いサウンドにストロボライト、頭上を飛び交うレーザー光線と、非日常を感じる空間です。

≪Líthi≫ / 黒川良一
≪Líthi≫ / 黒川良一

細長い建物と光の効果で、会場内には不思議な奥行きが感じられます。

KAMU tatami

「KAMU Black Black」から、さらに商店街を進んだ先にあるのが「KAMU tatami」。町屋を改修して作られた映像作品を中心とした企画展示スペースです。名前のとおり畳敷きなので、靴を脱いで、ゆったりと座って映像作品を鑑賞することができます。

「KAMU tatami」外観
「KAMU tatami」外観

ここで展示されているのは、3DCGを用いた作品を制作する渡辺豪による ≪「ひとつの景色」をめぐる旅≫。何の変哲も無い日常の風景が、気をつけなければ動画と気づかないくらいのゆっくりとしたスピードで、でもダイナミックに分解されながら、別の景色へと移っていきます。

≪「ひとつの景色」をめぐる旅≫ / 渡辺豪
≪「ひとつの景色」をめぐる旅≫ / 渡辺豪

2012年に発表された作品ですが、コロナ禍を経て日常が大きく変化している今、改めて見る意味が感じられるでしょう。

本多公園

「KAMU kanazawa」の新プロジェクトで、街自体を展示空間とする「TOWN HACKER」の第一弾として、公共空間である本多公園に設置されたのは、久保寛子による縦横幅8m、高さ3.5mの大型彫刻作品≪泥足≫。

≪泥足≫ / 久保寛子
≪泥足≫ / 久保寛子

防風ネットという農村部では身近な材料を用いて作られた大きな「足」からは、この土地を踏み固め耕し育ててきた先人たちの歴史の大きさを感じられるのとともに、屋外の空間におかれることで、人間に対する自然の大きさも感じられるような作品です。

このほか、現在は閉鎖中ですが、香林坊東急スクエア内にも展示施設「KAMU sky」があります。

金沢駅前
金沢駅前

旅行に出かけても、つい、観光地と駅、ホテルの間だけを行き来しがちですが、こうして展示を巡ることで、観光では足を運ばないような地域にも出向き、新しい発見や出会いも。

金沢に行くときには、「金沢21世紀美術館」だけではなく、ぜひ、「KAMU KANAZAWA」でアートを巡りながら、観光地だけではない「街」の風景も楽しんで見てください。

文・写真:ぷらいまり

ぷらいまり。 ライター / ぷらいまり。

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