LWA / Life With Art(ルワー)
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【西日本編】いつかは行きたい!国内の芸術祭 10選

ぷらいまり。

2022.09.29

全国各地で開催されている「芸術祭」。美術館の展覧会とは違い、街中や屋外に作品があらわれたり、大規模な作品が展示されたりして、今年はどこの芸術祭に行こうかな?と楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。

ひとことで「芸術祭」や「国際展」と言っても、地域やイベントごとに特徴があり、大きく印象が異なることも。

また、3年に1度の「トリエンナーレ」や、2年に1度の「ビエンナーレ」といった形式で開催されることの多い芸術祭ですが、コロナ禍で延期や中止も相次ぎ、次の開催年はいつ?と、気になるものも。

この記事では、日本全国の代表的な「芸術祭」それぞれの特徴や開催年をまとめ、【東日本編】と【西日本編】に分けて10ずつご紹介します。

【東日本編】はこちら▼ 【東日本編】いつかは行きたい!全国の芸術祭 10選

1)県内の複数の都市が舞台となる広域の都市型芸術祭

国際芸術祭 あいち (愛知県)

▍公式サイト:https://aichitriennale.jp/
▍会場:愛知県名古屋市、県内他市町村 (年によって異なる) ▍初開催年:2010 ▍開催年:2010, 2013, 2016, 2019, 2022 ▍ディレクター:芸術監督は年によって異なる

愛知県立美術館からオアシス21を見下ろした様子。手前の飛行機の絵は、「ドローンの影」/ ジェームズ・ブライドル (2019年撮影)
愛知県立美術館からオアシス21を見下ろした様子。手前の飛行機の絵は、「ドローンの影」/ ジェームズ・ブライドル (2019年撮影)

2010年から3年に1回、愛知県で開催されている都市型の国際芸術祭です。2005年に開催された「愛・地球博」(愛知万博)を契機に、続く大型のイベントとして立ち上げられました。

横浜や越後妻有と比べると後発の芸術祭・国際展でありながら、予算規模が大きく、来場者も多いことで注目されています。

第1回は名古屋市内を会場に開催されましたが、2回目以降は名古屋市内を中心に、年によって豊田市、豊橋市、常滑市など、愛知県内の複数の都市を組み合わせて開催。県内広域の地域を舞台にしているのもユニークですね。

年ごとに異なる芸術監督を指名して開催され、開催年によるテーマ性の強い国際展。国内外から100組のアーティストが参加するなど、規模は国内最大級です。また、演劇やダンスといった「パフォーミングアーツ」に力を入れているのも特徴となっています。

2019年までは「あいちトリエンナーレ」の名称でしたが、2022年は「国際芸術祭 あいち」と名称を変更して開催されました。

▍直近の開催日程 国際芸術祭 あいち2022
会期:2022年7月30日(土)〜10月10日(月・祝)

2) 近江八幡の古い町家を現代アートと融合

国際芸術祭BIWAKOビエンナーレ(滋賀県)

▍公式サイト:https://energyfield.org/biwakobiennale/
▍会場:滋賀県近江八幡旧市街地、彦根市街地など ▍初開催年:2001 ▍開催年:2001, 2004, 2007, 2010, 2012, 2014, 2016, 2018, 2020, 2022 ▍総合ディレクター:中田 洋子

2022年の展示の様子(プレスリリースより)
2022年の展示の様子(プレスリリースより)

横浜トリエンナーレと同じ2001年にスタートし、2022年で10回目を迎える歴史ある芸術祭です。初回の2001年から4回目までは3年に1度のペースで開催し、以降は2年に1回のペースで開催されてきました。

行政の主導ではなく、総合ディレクターの中田洋子氏によって立ち上げられた芸術祭。「故郷である滋賀県で、私にできることはないか」 と考えたのが開催のきっかけであり、中田氏”アートによるまちづくり”をテーマにさまざまな活動を行っています。

琵琶湖周辺を舞台に、国内外のアーティストが作品を発表。近江八幡の古い町家を現代アートと融合させた展示など、古き良き街並みを活かした展示が特徴的です。

▍直近の開催日程 BIWAKOビエンナーレ 2022
会期:2022年10月8日(土)〜11月27日(日)"

3)地域文化と先端技術を組み合わせたデジタルアートのフェスティバル

ALTERNATIVE KYOTO(京都府)

▍公式サイト:https://2022.alternative-kyoto.jp/
▍会場:天橋立ほか 京都府内 ▍初開催年:2019 ▍開催年:2019, 2020, 2021, 2022

「Altered Perspectives 2021」/ 原摩利彦&白木良 (プレスリリースより)
「Altered Perspectives 2021」/ 原摩利彦&白木良 (プレスリリースより)

多くの人がイメージする京都駅周辺の”いわゆる京都”とは違う、「もうひとつの京都」を舞台に2019年から毎年開催されているアートイベントです。

天橋立をはじめとした府の北側のエリアを中心にはじまり、「海の京都(府北部)」「森の京都(府中部)」「お茶の京都(府南部)」のエリアの歴史や風土、有形文化財や名勝、景観、豊かな自然や生活文化等を題材としたアートプロジェクトを展開しています。

「先端技術」と「地域文化(歴史・風土・自然)」を組み合わせたデジタルアート作品や、光、映像、サウンドを使った作品を数多く展示していることも特徴的です。

2022年は、福知山市 / 宮津市・天橋立 / 向日市の3つの会場を舞台に、日の入り後の夜の時間帯に、複数の作品が展示されます。

▍直近の開催日程 ALTERNATIVE KYOTO 2022
会期:福知山市:2022年9月9日~10月10日 ※金・土・日・祝のみ 宮津市:2022年9月23日~10月23日 ※金・土・日・祝のみ 向日市:2022年10月29日〜11月20日 ※土・日のみ

4)広大な自然と観光とアートを合わせて楽しむ

六甲ミーツ・アート芸術散歩(兵庫県)

▍公式サイト:https://www.rokkosan.com/art2022/
▍会場:六甲山周辺地域 ▍初開催年:2010 ▍開催年:2010, 2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 2016, 2017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022 ▍総合ディレクター:年によって異なる

通常は非公開の安藤忠雄建築「風の教会」も作品に (2015年撮影)
通常は非公開の安藤忠雄建築「風の教会」も作品に (2015年撮影)

2010年から毎年、六甲山を舞台に毎年開催されるアートイベントです。2022年で13回目の開催となり、通算430組を超えるアーティストが出展しています。

ゲストアーティストによる作品と公募作品を、六甲山周辺の施設や自然の中に展示。公募作品を対象とした「公募大賞」や、招待アーティストを含む全出展アーティストを対象にした「オーディエンス大賞」という賞が用意されており、鑑賞者も好きな作品に投票できるのがユニークですね。

六甲山の自然の中に置かれた作品のほか、ケーブルカーやホテル、ミュージアムも会場に。さらに、安藤忠雄氏の教会三部作のひとつで、通常は非公開の「風の教会」での作品展示など、広大な自然と観光とアートを合わせて楽しむことができます。

▍直近の開催日程 六甲ミーツ・アート 芸術散歩2022
会期:2022年8月27日(土)~11月23日(水・祝)

5)徒歩で雄大な自然を作品を巡る、唯一無二の芸術祭

MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館 (奈良県)

▍公式サイト:https://mindtrail.okuyamato.jp/
▍会場:奈良県 吉野町、天川村、曽爾村 ▍初開催年:2020 ▍開催年:2020, 2021, 2022 ▍プロデューサー:齋藤 精一(パノラマティクス主宰)

2020年に初開催され、以降、毎年開催されています。会場は、奈良県の山岳地帯が連なる中南部と高原が広がる東部にかけての19市町村。

奈良県南部・東部に位置する奥大和を、5時間以上かけて歩きながら、雄大な自然を作品を通して体験するという、アートと自然が融合した唯一無二の芸術祭です。

世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」など「修験道の聖地」として長い歴史をもつ場所で、鑑賞の服装として登山靴を推奨されており、鑑賞にもそれなりの体力が必要な芸術祭ですが、コロナ禍の時代には安心かもしれませんね。

プロデューサーは、パノラマティクス(旧 ライゾマティクス・アーキテクチャー)主宰の齋藤 精一氏。自身もアーティストとして参加しています。

▍直近の開催日程 MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館
会期:2022年9月17日(土)~ 11月13日(日)

6)コンセプチュアルな作品を通じて アーティストの思考に遭遇する

岡山芸術交流 (岡山県)

▍公式サイト:https://www.okayamaartsummit.jp/
▍会場:旧内山下小学校、岡山県天神山文化プラザほか岡山駅周辺施設 ▍初開催年:2016 ▍開催年:2016, 2019, 2022 ▍総合ディレクター:那須 太郎

会場のひとつ、旧内山下小学校のプールや、向かいの山陽放送の巨大サイネージも作品に変貌しました (2019年撮影)
会場のひとつ、旧内山下小学校のプールや、向かいの山陽放送の巨大サイネージも作品に変貌しました (2019年撮影)

2016年から、岡山市内で3年ごとに開催されている国際現代美術展です。岡山城、岡山後楽園周辺エリアなど、岡山駅から徒歩で回れる範囲で、様々な歴史・文化施設を会場に展示が行われています。

コンセプチュアル・アートを中心に扱うギャラリー「TARO NASU」の代表 那須太郎氏が総合ディレクターを務めており、コンセプチュアルな作品を多数展示。国内の芸術祭を初めとしたアートイベントでは、直感的に分かりやすい作品やビジュアルに訴える作品も多い中、「アーティストの思考との遭遇」に重点を置いた展示です。

アーティスティックディレクターとして、2016年にはリアム・ギリック、2019年にはピエール・ユイグら、世界的に著名なアーティストを迎えるのも特徴的で、2022年にはリクリット・ティラヴァーニャがアーティスティックディレクターを務めます。

▍直近の開催日程 岡山芸術交流 OKAYAMA ART SUMMIT 2022
会期:2022年9月30日(金)- 11月27日(日)

7)船で離島を巡り サイト・スペシフィックな作品に出会う

瀬戸内国際芸術祭(香川県)

▍公式サイト:https://setouchi-artfest.jp/
▍会場:直島、豊島をはじめとした瀬戸内海の島々 ▍初開催年:2010 ▍開催年:2010, 2013, 2016, 2019, 2022 ▍総合ディレクター:北川フラム

瀬戸内の風景に溶け込んだ作品が多く展示されます 写真は、男木島に展示された「歩く方舟」/ 山口啓介 (2016年撮影)
瀬戸内の風景に溶け込んだ作品が多く展示されます 写真は、男木島に展示された「歩く方舟」/ 山口啓介 (2016年撮影)

直島をはじめとする瀬戸内の島々を舞台に、2010年から3年に1回開催されている芸術祭です。

1992年に直島に「ベネッセハウス」がオープンしたことで「アートの島」として有名になりましたが、そのオーナーであるベネッセ・福武財団の福武總一郎氏と、新潟の越後妻有芸術祭のディレクターを務めていた北川フラム氏が出会い、さらに地元の自治体が加わることで芸術祭の開催につながっていきました。

美しく豊かな海でありながら、工業開発や海砂利採取などによる海のやせ細りや、産業廃棄物問題、人口減少、高齢化といった課題にも直面してきた瀬戸内海の島々。その活力を取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の「希望の海」となることを目指して開催されています。

2022年には春、夏、秋の3会期に分けて開催。会期ごとに異なる島を舞台とし、瀬戸内海の12の島と2つの港を舞台に多くの作品・プログラムが展開されました。それぞれに違った歴史・特徴を持つ島々を船で巡る、ほかにはない特徴的な芸術祭です。

▍直近の開催日程瀬戸内国際芸術祭2022
春会期:2022年4月14日[木曜日]—5月18日[水曜日] 夏会期:8月5日[金曜日]—9月4日[日曜日] 秋会期:2022年9月29日[木曜日]—11月6日[日曜日]

8) 重要文化財建築もアート作品に 歩いて巡れる温泉街の芸術祭

道後オンセナート(愛媛県)

▍公式サイト:https://dogoonsenart.com
▍会場:道後温泉地区 ▍初開催年:2014 ▍開催年:2014, (2015), (2016), 2017-2018, (2019-2020) ※()は「道後アート」として開催

重要文化財建築の「道後温泉本館」も作品に (2014年撮影)
重要文化財建築の「道後温泉本館」も作品に (2014年撮影)

2014年から、愛媛県の道後温泉地区で開催されているアートイベントです。半径500Mの道後温泉地区に多くのアート作品が展示され、浴衣のまま歩いて楽しむことができるようなアートイベントです。

重要文化財である「道後温泉本館」の建物までも作品にしてしまうというユニークな芸術祭。複数のアーティストが街中に作品を展開する「道後オンセナート」のほか、2015年には「蜷川実花×道後温泉」、2016年には「山口晃×道後温泉」、2019-2020年には「日比野克彦×道後温泉」と、1アーティストが街を変貌させる「道後アート」というイベントも展開されてきました。

2022年には4年ぶりとなる「道後オンセナート」を開催。保存修理工事中の道後温泉本館を、大竹伸朗氏の巨大テントが覆うほか、TIDE氏初となる壁画作品なども展開されています。

▍直近の開催日程 道後オンセナート2022
会期:2022年4月28日(木)- 2023年2月26日(日)

9)毎年1組のアーティストを招聘

In Beppu (大分県)

▍公式サイト:https://www.beppuproject.com/
▍会場:別府市内各所 ▍初開催年:2009(混浴温泉世界) ▍開催年:2009, 2012, 2015(混浴温泉世界)、      2016, 2017, 2018, 2019, 2020, 2021(In Beppu) ▍総合プロデューサー:山出 淳也

アニッシュ・カプーア in BEPPU の様子 (2018年撮影)
アニッシュ・カプーア in BEPPU の様子 (2018年撮影)

大分県別府市では、2009年からアートイベントが開催されています。当初は「混浴温泉世界」という、3年に1回のトリエンナーレ形式のイベントで、複数のアーティストが別府市内に作品を展開してきました。

2016年からは、「In Beppu」として、毎年、国際的に活躍する1組のアーティストを招聘。地域性を活かしたアートプロジェクトを展開しています。アニッシュ・カプーアや、西野達、目といったアーティストの個展形式の芸術祭が開催されてきました。

これらのイベントを手がけるのは、別府市を活動拠点とするアートNPO「BEPPU PROJECT」。代表理事であり、アーティストの山出淳也氏 (2022年4月1日付で代表理事は交代) を中心に、芸術祭のほか、市民文化祭「ベップ・アート・マンス」やアーティスト・イン・レジデンスプログラムの「KAHIMA」など、さまざまな事業を通じてアートを活用した魅力ある地域づくりに取り組んでいます。

▍直近の開催日程 塩田千春展『巡る記憶』
(BEPPU PROJECT, 東アジア文化都市2022大分県 企画)
会期:2022年8月5日(金)〜10月16日(日)

10)世界自然遺産のなかで体感するアート作品

やんばるアートフェスティバル (沖縄県)

▍公式サイト:https://yambaru-artfes.jp/
▍会場:沖縄県本島北部地域 ▍初開催年:2017 ▍開催年:2017, 2018-2019, 2019-2020, 2020-2021, 2021-2022 ▍総合ディレクター:仲程 長治

やんばる地域の自然とアートを満喫 (プレスリリースより)
やんばる地域の自然とアートを満喫 (プレスリリースより)

2017年以降、沖縄県宜味村を中心とした、沖縄県本島北部地域(通称:やんばる)を舞台に、冬の時期に年をまたいで開催されている芸術祭です。

国内外のアーティストが新作を発表する「エキシビション部門」と、やちむん、ガラス、紅型、木工、琉球藍染といった、地域色の表れる多彩な作品を集めた「クラフト部門」の2つのセクションを展開するのが特徴的です。

総合ディレクターは、沖縄の原風景を撮り続けてきた沖縄県在住の写真家であり、アートディレクターの仲程長治氏。

2021年7月には、沖縄北部(やんばる)は、奄美大島、徳之島、西表島と共にユネスコの世界自然遺産に登録され、その価値が世界的に認められました。「やんばる」の原風景のなかで、現代アートや伝統工芸を体感・体験できる芸術祭です。

2021-2022年のエキシビジョン部門では、椿昇氏や、Chim↑Pom、谷原菜摘子氏、のん氏らが参加しました。

▍直近の開催日程 やんばるアートフェスティバル 2021-2022
会期:2021年12月18日(土) ~ 2022年1月16日(日)

各地で開催されている芸術祭、いくつ行ったことがありましたか?気になる芸術祭・国際展があったら、是非次の開催日程をチェックしてみてくださいね。

ぷらいまり。 ライター / ぷらいまり。

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